
北ギリシャ、エーゲ海に突き出したハルキディキ半島。その先端部に3本の指のように並ぶ最も東端の半島に、世界遺産に登録されておりながら、撮影禁止のために、これまで謎に包まれた場所がある。
全長45km、幅5kmに及ぶこの半島を、原始キリスト教の流れを最も色濃く汲むギリシャ正教の最大の聖地であり、聖山(アギオンオロス)アトスと呼ぶ。
伝承によれば、生神女マリア(キリストの母)が旅の途中、嵐に遭遇し、この地に降り立ったのが始まりとされ、2033mを誇るアトス山を中心とする美しい半島に惹かれ、自らの土地としたとされる。
950年を過ぎると、聖アサナシオスがアトス山から湧き出る豊かな水脈を見つけ、メギスティス・ラヴラ修道院を建設、これ以降、共同居住型の修道施設が活発に建てられるようになり、修道士が住みついた。
1406年より、女性はマリア様だけであるという考えから、女人禁制となり、その掟は今日まで守られ続け、男性のみ2000人の修道士が今でも、
日夜祈りを中心とした自給自足の生活を送っているのである。
暦もユリウス暦を採用し続け俗世とは13日のズレがあり、時の刻みも夕方6時を翌日の午前0時とするビザンチン時刻を用いている。
ギリシャ領内にありながら、独立した宗教自治国として認められおり、ギリシャ人の9割以上が正教徒である、この国の人々にとっては、昨今の経済危機に直面しながらも心の拠り所として、神に最も近い憧れの地となっている。
この地の首席大臣より特別に撮影の許可を頂き、近代文明から隔絶されたエーゲ海に臨む半島で、中世から変わらぬ守り続けられた信仰の姿を修道士たちと共に暮らし、その生活に密着し、祈りとは、巡礼とは、、、、千年続く祈りを今に伝えるべく今日まで取材を続けている。